誤読な世界




誤読な世界



 パソコンの日本語辞書ソフトで「ふいんき」と入力して「雰囲気」と変換してくれるのがあるそうな。よけいなお世話だ。日本語が時代とともに移り変わるのはいたしかたないが、常識外れな間違いを積極的に流通させて、それで正規の日本語辞書ソフトと言えるのか。

 僕が使ってるMacの日本語辞書ソフト(EG Bridge)でも似たようなことはやっている。「かつこ」と入力したら「()」と変換する。大文字小文字の違いを無視。間違って「ゆうしょぅ」と入力しても「優勝(有償)」とは変換してくれない(ときどきやらかすミス)。そのくせ「りようじかん」と入力すると「領事館」に変換され、「利用時間」とは変換してくれない。いいかげんだ。日本語辞書ソフトはよけいなサービスをやめて、正しく入力するためのツールに徹したら、と提案したい。

 「どくだんば」と入力して「独壇場」と変換するソフトは今のところなさそう。読みは「どくだんじょう」で、もともとは「どくせんじょう(独擅場)」。「どくせんじょう」を誤読して「どくだんじょう」に変わり、さらにそれを誤読する人がいる。  「独断場」と書く人もいる。「どくだん」と「ば」に分けて変換してしまった結果だ。「独断場」が国語辞典に載る日は、来ないだろうね。


 カタカナの誤読もあります。キャノンは社名をキヤノンに変更している。文字の見映えを優先した結果だそうだ。まだこれは許せる。フジフィルムがフジフイルムに変更したのは許しません。フィルムを「ふいるむ」と読む人が実際にいるんです。誤読にお墨付きを与える社名変更は断じて許しません。

 いっぺん電話したろかなと思う。「もしもしっ、ふじふいるむさんですかっ!」「ハイ、フジフィルムです」「すみません、間違えました」ガチャッ!


 株価のニュースでよく耳にする「乱高下」は、テレビで聞いてる人は読みがわかるでしょう。「らんこうげ」ですね。「らんこうか」じゃ「乱交家」に変換されてしまいますよ。

 誤読の王者は「十」。「十手、十発、十兆」などの熟語では「じっ」と発音する。「じゅっ」は誤読。とはいうものの、僕も「十回、十歳」を「じっかい、じっさい」と読んだことがない。辞書が日本語の変化に追いついてない例だ。ワープロ日本語ソフトは融通を利かせ、「じゅって、じゅっぱつ、じゅっちょう」でも変換してくれます。文化審議会も「じゅっ」という慣用的な読みを認める方向なので、いずれ辞典に載りそう。

 国語は時代につれて動いていく。用法や意味、読みが変わっていく。朝日新聞に、「日和る(ひよる)」という言葉の意味を若い人たちがとり違えて使っていると書いてあった。「弱気になる」というような用法。わからないでもない。「日和見」の意味を知らなきゃ勘違いするかも。そのうちこの誤用法も国語辞典に載るんじゃないかな。

 「王道」はすでに誤った用法(正統的といったような使い方)が定着し、正しい用法は完全にすたれてしまった。が、未だにどの辞書も古い用法しか載せていない。これなど、ちょっと頑固かなと思う。

 誤用の「一生懸命」はすでにどの国語辞典でも載せている。正解は「一所懸命」。こちらを使うことは少数派になった。「イッショーケンメー」のリズムが発声しやすいんでしょう。


 ワープロのせいで日本人は漢字が書けなくなったと言われる。書けなくなり、読めなくなった。読めなきゃ入力できません。ある程度は正しい読みを身に付けるべきと思う。

 「一段落」を「ひとだんらく」と読む人も多い。「いちだんらく」です。変換できないから、「ひと段落」と書く例が多い。意味の近い「一呼吸」「一休み」「一息」あたりに引きずられている。

 「一息」入れてパソコンをオフにし、一度紙の辞典をじっくり眺めてみませんか。

ひょっこり通信 2008.3.9




爆笑の誤訳。 ・・・ネットの自動翻訳

誤用誤用と云ふ勿れ・・・世に誤用の種は尽きまじ

あやうし日本映画 ・・・日本映画タイトルのでたらめな英語訳

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