突然!ネタばれしても委員会
第7回
『KAMIKAZE TAXI』
ここはネタばれオンリーのコーナーです。
これから観る方は、観てから読んでくださいね。
『KAMIKAZE TAXI』
1995年度作品
監督:原田眞人
原題:Kamikaze Taxi
配給:ビターズ・エンド
配役:高橋和也/役所広司/片岡礼子/ミッキー・カーチス/矢島健一/中上ちか/
内藤武敏/田口トモロヲ/根岸季衣/塩屋俊/シーザー武志/渡辺哲、他
観たかった映画をつたやの旧作(邦画アクション)で見つけたときは狂喜乱舞。予
想を裏切らない傑作でした。
恋人と友人を殺されて組織に反旗を翻したチンピラ、日系ペルー人のタクシー運転
手、フーテン娘。復讐のための道行きとしては奇妙な三人連れだが、不思議と調和し
ている。
三人組の中で、世間の裏側をゆらゆらとたゆたう女を片岡礼子が演じている。当時、
こういったわけのわからない女を演じさせれば絶品だった。
ペルー人を演じるのはおおなんと役所広司なんですよ。これが意外なはまり役。日
本語はたどたどしいのに、ときどき混じるスペイン語に切り替わったとたん、発音が
クリアになる。そのアンバランス感が絶妙。彼がラストで大暴れするのは伏線が明示
している。
見どころはありすぎるが、全部列挙しない。ネタばれ専門コーナーなので、エンデ
ィング。撃たれて死にゆく男(ミッキー・カーチス)と、撃った男(役所広司)との
悠長な会話がえんえんと続く。ありえないのに妙にリアルなシーン。肌が粟立ち、発
狂しそうになった。
「ちょっとあんた、急いでる? 急いでないんだったら、なんであんたが私を殺す
のか教えてくれないか」
「どこから言えばいいのか」
「ちゃんと初めから説明してくれ」
そう言われて暗殺者は1964年の日本出国から語り始める。もちろんこの件とは
なんの関係もない。なぜ殺さなければならないのかを彼は理路整然と説明できない。
「頼むからはしょってくれ。もうもたないんだ」と涙声で言われても、暗殺者は順々
に不器用に語っていくことしかできない。自分がなぜ殺されたのかもわからないまま
死んでいく。このことじたいが最高の復讐になっていることに気づく。これは隠れた
傑作だ。
2012.6.11 |